体系学習
システム監査と内部統制を一つの流れで理解する
システム監査の目的、独立性、監査計画、予備調査・本調査、監査証拠、報告・フォローアップ、内部統制、ITガバナンスを整理する。
対象資格:ITパスポート / 基本情報技術者試験
目安時間:35分
このページで理解できること
- システム監査が情報システムリスクへの対応を独立・客観的に検証評価する活動だと説明できる
- 監査計画から予備調査・本調査・評価・報告・フォローアップまでの流れを説明できる
- 監査証拠と監査調書の役割を区別できる
- 内部統制で職務分掌やチェック体制が必要な理由を説明できる
- ITガバナンスとITマネジメントの役割の違いを説明できる
- FEではIT全般統制とIT業務処理統制、保証監査と助言監査、CSAを整理できる
ITパスポート:システム監査の目的と基本的な流れ、監査人の独立性・客観性、監査証拠・監査調書、内部統制、職務分掌、ITガバナンスの基本を区別できる状態を目標にする。
基本情報技術者試験:ITパスポート範囲に加え、監査対象・監査計画・保証/助言、監査品質、システム監査基準、IT全般統制・IT業務処理統制、CSAまで関連付けて理解する。
システム監査は、監査人がシステムを運用したり修正したりする活動ではありません。情報システムに関するリスクへ適切に対応できているかを、独立かつ客観的な立場から検証・評価し、保証や助言につなげます。このページでは、監査の流れと、その対象となる内部統制・ITガバナンスを一続きで整理します。
まずは監査の基本的な流れ
監査は、調べて終わりではなく、計画・証拠・報告・改善確認まで続きます。
監査計画を策定する
目的、テーマ、対象範囲、方法、時期、体制、スケジュールなどを定めます。
予備調査を行う
文書やヒアリングなどで対象の概要とリスクを把握し、本調査の重点を絞ります。
本調査で証拠を集める
監査手続を適用し、判断の根拠となる十分な監査証拠を入手・評価します。
評価し結論を出す
監査基準や判断尺度と証拠を照らし、統制やリスク対応の状態を評価します。
監査結果を報告する
指摘事項や改善提案を監査依頼者・関係者へ適切な形式で報告します。
フォローアップする
改善計画や対応が適切かつ適時に実施されたかを確認します。
1. システム監査は独立・客観的な立場から検証する
監査対象を自ら運用して結果を正当化するのではなく、独立した評価が必要です。
システム監査では、情報システムに関するリスクへ適切に対応しているかを、独立かつ客観的な立場のシステム監査人が検証・評価します。
目的は単に誤りを探すことではなく、保証や助言を通じて組織の経営・業務活動の有効性や効率性、変革、説明責任を支援することです。
監査人には高い倫理観、専門的能力、正当な注意、秘密保持などが求められます。監査対象の意思決定や運用に直接関与しすぎると、独立性・客観性を損なうおそれがあります。
2. 監査計画では「何を・なぜ・どう調べるか」を定める
全部を同じ深さで調べるのではなく、目的とリスクに応じて範囲と方法を決めます。
監査計画では、監査の目的・テーマ、対象範囲、方法、実施時期、体制、スケジュールなどを定めます。
対象は運用中のシステムだけとは限りません。FEでは、企画、開発、運用、保守、廃棄、外部サービスの調達・利用、さらにコントロール、マネジメント、ガバナンスまで監査対象になり得ることを理解します。
リスクアプローチでは、重要なリスクに重点を置いて監査手続を設計します。限られた時間・人員で有効かつ効率的に監査するための考え方です。
3. 監査証拠は結論の根拠、監査調書は実施内容と判断を記録する
『証拠そのもの』と『監査人が残す記録』を区別します。
監査証拠は、監査人が評価や結論を裏付けるために入手する情報です。設定資料、ログ、契約書、承認記録、観察結果、ヒアリング結果などが証拠になり得ます。
監査調書は、どの監査手続を実施し、どの証拠を確認し、どのような判断へ至ったかなどを記録する文書です。監査の品質管理や後日の確認にも利用されます。
監査人は、単に証拠を集めるだけでなく、その信頼性や十分性を評価して結論を形成します。
| 用語 | 役割 | 例 |
|---|---|---|
| 監査証拠 | 監査判断を裏付ける情報 | ログ、設定記録、承認記録、契約書など |
| 監査調書 | 監査手続・証拠・判断過程を記録する | 実施した確認項目や評価結果の記録 |
4. 監査報告の後にフォローアップがある
改善提案を書いた時点で監査活動が完全に終わるとは限りません。
監査結果は、監査目的に応じた形式で監査依頼者や関係者へ報告します。報告書では指摘事項や改善提案などを明確にします。
監査対象側が改善計画を作成した場合、フォローアップでは、その措置が適切かつ適時に実施されているかを確認します。
フォローアップは、監査人自身が監査対象の改善作業を代行することではありません。改善を実行する責任と、改善状況を独立して確認する役割を分けることが重要です。
5. 内部統制は組織が自ら構築・運用する仕組み
ミスや不正を一人の注意力だけで防ぐのではなく、業務の仕組みとしてコントロールします。
内部統制は、健全かつ効率的な組織運営のために、組織が自ら構築し運用する仕組みです。
業務プロセスを明確にし、実施ルールを定め、チェック体制を設けることで、誤りや不正を防止・発見しやすくします。
職務分掌は、一人に相反する権限や処理を集中させない考え方です。例えば申請・承認・支払を一人だけで完結させないことで、不正や誤りを発見しやすくします。
内部統制を整備しても、共謀、人為的ミス、経営者による統制無視などによって完全にリスクをゼロにはできません。内部統制には限界があることも理解します。
6. ITガバナンスとITマネジメントは役割の高さが違う
あるべき方向を定めることと、具体的なコントロールを実行することを区別します。
ITガバナンスは、取締役会等がステークホルダのニーズを踏まえ、組織の価値や信頼を高めるために、ITの利活用のあるべき姿を示す戦略・方針を定め、その実現を図る活動です。
ITマネジメントは、経営方針やITガバナンス方針に基づくIT戦略の目標を達成するために、具体的なコントロールを実行し、その結果を経営者へ報告する体制を整備・運用する活動です。
システム監査は、こうしたガバナンスやマネジメント、コントロールが適切に機能しているかを独立した立場から検証・評価する役割を持ちます。
ITパスポートではここまでを確実に
- システム監査の目的と独立性・客観性の必要性を説明できる
- 監査計画→予備調査→本調査→評価・結論→報告→フォローアップの流れを説明できる
- 監査証拠と監査調書を区別できる
- 内部統制で業務プロセス、職務分掌、ルール、チェック体制を整える理由を説明できる
- ITガバナンスとITマネジメントの役割の違いを説明できる
- フォローアップが改善状況の確認であり、監査人による改善作業の代行ではないと理解している
FE深掘り
7. FEでは保証・助言、監査品質、判断尺度まで扱う
監査目的に応じて、結論の示し方や評価基準を明確にします。
FEでは、保証を目的としたシステム監査と、助言を目的としたシステム監査を扱います。どちらも独立性・客観性を保ちながら、監査目的に応じて検証・評価し報告します。
システム監査基準は監査人の倫理、独立性・客観性、正当な注意、秘密保持などの考え方を示します。また、システム管理基準などを、監査の判断尺度を確定する際の客観的な参照基準として利用できます。
監査体制では、監査ニーズを満たし一定の監査品質を確保できるよう、体制の整備・運用も必要です。
FE深掘り
8. FEではIT全般統制・IT業務処理統制とCSAを区別する
ITに関する内部統制を、基盤全体と個別業務処理の両面から見ます。
IT全般統制は、システム開発・変更、アクセス管理、運用管理など、複数のシステムや業務処理統制を支えるIT環境全体の統制として整理できます。
IT業務処理統制は、個別の業務処理に組み込まれた入力チェック、処理の正確性確認、承認など、業務処理そのものに関係する統制です。
CSA(Control Self Assessment:統制自己評価)は、業務を担当する部門などが自ら統制の状態を評価し、改善につなげる考え方です。独立したシステム監査そのものと同一ではありません。
FEでは法令遵守状況も適切な時期・方法で評価し、必要に応じて改善することを内部統制・ITガバナンスと関連付けて理解します。
| 考え方 | 主な対象 |
|---|---|
| IT全般統制 | IT環境全体を支える開発・変更・アクセス・運用などの統制 |
| IT業務処理統制 | 個々の業務処理に組み込まれた入力・処理・出力・承認などの統制 |
| CSA | 業務担当部門などが自ら統制の状態を評価する取組 |
基本情報ではここまでつなげる
- 監査計画で目的・範囲・方法・時期・体制などを定める理由を説明できる
- 監査証拠の十分性・信頼性と監査調書の役割を説明できる
- 保証を目的とした監査と助言を目的とした監査を区別できる
- システム監査基準とシステム管理基準の位置付けを説明できる
- IT全般統制とIT業務処理統制を区別できる
- CSAと独立したシステム監査を同一視しない
- 内部統制・ITガバナンス・システム監査の関係を説明できる
最後に「統制する人」と「評価する人」を分ける
- 組織は内部統制を自ら構築・運用する
- 経営側はITガバナンスでITの方向性を示す
- マネジメントは方針に基づき具体的なコントロールを実行する
- 監査人は独立・客観的な立場から検証・評価する
- 監査では証拠を集め、判断過程を調書に残す
- 報告後は改善状況をフォローアップする
『改善する側』と『独立して評価する側』を分けて考えると、内部統制・ITガバナンス・システム監査の役割を混同しにくくなります。