体系学習
経営戦略からシステム企画・調達までをつなぐ
情報システム戦略、As-Is/To-Be、システム化計画、要件定義、RFI/RFP、投資評価を企画の流れとして整理する。
対象資格:ITパスポート / 基本情報技術者試験
目安時間:35分
このページで理解できること
- 経営戦略と情報システム戦略の関係を説明できる
- As-IsとTo-Beを使って現状と目標像を区別できる
- システム化構想・システム化計画・要件定義の役割を区別できる
- RFI・RFP・提案書・見積書の役割と順序を説明できる
- IT投資を効果・期間・実現可能性・リスクなど複数観点で評価する理由を説明できる
- FEではEAのビジネス・データ・アプリケーション・テクノロジの四領域を区別できる
ITパスポート:経営戦略と情報システム戦略の関係、システム化計画、業務要件定義、RFI/RFPを含む調達の基本的な流れを理解し、文書や活動の役割を区別できる状態を目標にする。
基本情報技術者試験:ITパスポート範囲に加え、As-Is/To-Be、EAの四つのアーキテクチャ、情報システム投資計画、要件の合意、調達選定・リスク分析まで一連の企画活動として理解する。
情報システムは、技術的に作れるから導入するのではありません。経営・事業上の目標を起点に、現状を分析し、目指す業務とシステムの姿を描き、投資対象を選び、要件を合意し、必要なら外部から調達します。このページでは、戦略から企画・要件・調達までを一続きの意思決定として整理します。
まずは企画の流れを一本につなぐ
『何を作るか』より前に、『なぜ必要か』を決めるところから始まります。
経営・事業目標を確認する
情報システムは経営戦略や事業戦略を実現する手段として位置付けます。
現状を分析する
業務や既存システムのAs-Isを把握し、課題・制約・IT動向を整理します。
目標像と戦略を定める
To-Beとなる業務・システム像と、そこへ向かう基本戦略を定めます。
システム化を計画する
対象範囲、優先順位、概算コスト、効果、体制、スケジュールなどを具体化します。
要件を合意する
利用者や利害関係者のニーズを整理し、業務要件・機能要件・非機能要件を明確にします。
調達して評価する
RFI/RFPなどを用い、提案・費用・実現性・リスクを比較して調達先や方式を選びます。
1. 情報システム戦略は経営戦略を実現するためにある
システム導入そのものを目的にせず、事業上の目標との整合を見ることが出発点です。
情報システム戦略は、経営戦略や事業戦略を実現するために、情報システムをどのように活用・整備するかの方向性を定めるものです。
例えば『顧客対応を速くする』という事業目標があるなら、単に最新製品を導入するのではなく、現状の業務、顧客接点、データ、既存システムを調査して、どの課題をITで解くかを決めます。
戦略段階では、複数の投資候補について効果、期間、実現可能性、リスク、経営戦略との整合性を比較します。『技術的に可能』と『投資すべき』は同じではありません。
2. As-IsからTo-Beへ、現状と目標像の差を明らかにする
改善は現状を知らずに始められません。
As-Isは現在の業務や情報システムの状態、To-Beは将来目指す状態です。両者を比較することで、解決すべき課題や必要な変化を具体化できます。
業務改善では、業務フローやデータの流れを可視化し、重複作業、待ち時間、手作業、情報の分断などを発見します。
BPRは業務プロセスを抜本的に見直す考え方、BPMは業務プロセスを継続的に管理・改善する考え方として整理できます。単なるシステム置換だけでなく、業務そのものをどう変えるかが重要です。
| 観点 | As-Is | To-Be |
|---|---|---|
| 意味 | 現在の業務・システムの姿 | 目標とする将来の業務・システムの姿 |
| 使い方 | 課題・制約・現状資産を把握する | 改善後の業務や投資対象を具体化する |
| 注意 | 現状をそのまま正当化しない | 実現可能性や優先順位も確認する |
3. システム化計画で「全体像・順序・費用・効果」を具体化する
戦略を、実行可能な計画へ落とし込みます。
システム化構想では、経営戦略や情報システム戦略を踏まえて、対象業務、目標、システム投資の対象など大きな方向性を定めます。
システム化計画では、対象範囲、開発や導入の優先順位、概算コスト、期待効果、体制、スケジュール、リスクなどを具体化し、システム化の全体像を明らかにします。
複数のシステムを同時に進められない場合は、経営への寄与、緊急度、依存関係、実現可能性などを考慮して優先順位を付けます。
計画後も、環境変化や実績に応じて投資の妥当性を評価し、必要なら見直します。
4. 要件定義では「何を実現すべきか」を利害関係者と合意する
要求を集めるだけでなく、分析・整理・確認・合意まで行います。
業務要件は、経営戦略、システム戦略、利用者のニーズなどを踏まえて、業務として何を実現する必要があるかを定めます。
その後、業務要件を実現するために情報システムへ求める機能を機能要件として、性能、信頼性、セキュリティ、運用性など機能以外の条件を非機能要件として整理します。
異なるステークホルダの要求は衝突することがあります。実現可能性や優先順位、戦略との整合性を確認し、関係者間で合意・承認することが重要です。
要件定義は、設計者が実装方法を決める工程と同じではありません。まず『何を満たすべきか』を明確にします。
| 種類 | 主に明らかにするもの | 例 |
|---|---|---|
| 業務要件 | 業務として達成したいこと | 受注処理を短縮する |
| 機能要件 | システムが提供する機能 | 注文状態を検索できる |
| 非機能要件 | 性能・信頼性・セキュリティなどの条件 | 応答時間、可用性、権限制御 |
5. RFIとRFPは目的が違う
情報収集の文書と、具体的な提案を依頼する文書を区別します。
調達では、外部製品やサービスを購入するのか、内部開発するのか、外部委託するのかなど、要件に合う調達方法を検討します。
RFIはRequest For Informationの略で、RFPを作る前などに、考えられる技術や手段、製品・サービスの情報をベンダーから集めるための依頼です。
RFPはRequest For Proposalの略で、システム概要、提案依頼事項、調達条件などを示し、ベンダーへ具体的な提案を求めます。
ベンダーはRFPを基に提案書を作成し、システム構成や開発方法などを提示します。見積書は費用を示す文書であり、提案内容の比較評価と合わせて選定に使います。
| 文書 | 主な作成側 | 目的 |
|---|---|---|
| RFI | 発注側 | 技術・手段・市場情報を集める |
| RFP | 発注側 | 条件を示して具体的な提案を依頼する |
| 提案書 | ベンダー側 | RFPに対する実現方法や構成を提案する |
| 見積書 | ベンダー側 | 開発・運用・保守などの費用を示す |
6. IT投資は「効果がありそう」だけで決めない
効果・費用・期間・実現可能性・リスクを比較して判断します。
システム投資では、導入費用だけでなく、運用・保守費用、教育、移行、既存システムとの連携なども含めて考える必要があります。
効果には、売上増加やコスト削減のように金額へ換算しやすいものだけでなく、処理時間短縮、品質向上、リスク低減、顧客満足向上などがあります。
複数案を比較するときは、費用対効果だけでなく、効果が出るまでの期間、実現可能性、リスク、経営戦略との整合性などを合わせて評価します。
導入後も、利用実態や効果を評価して、継続・改善・刷新・廃棄などを判断することが重要です。
ITパスポートではここまでを確実に
- 情報システム戦略が経営戦略を実現するための方向性であることを説明できる
- As-IsとTo-Beの意味を区別できる
- システム化計画で範囲・順序・コスト・効果などを具体化することを理解している
- 業務要件・機能要件・非機能要件を区別できる
- RFI・RFP・提案書・見積書の役割を区別できる
- 調達先を価格だけでなく複数の評価基準で比較する理由を説明できる
FE深掘り
7. FEではEAで業務とシステムを全体最適の視点から見る
部分ごとに最適化するのではなく、組織全体を共通のモデルで整理します。
EA(Enterprise Architecture)は、組織全体の業務と情報システムを統一的な方法でモデル化し、業務とシステムを同時に改善するための設計・管理手法です。
FEでは、ビジネスアーキテクチャ、データアーキテクチャ、アプリケーションアーキテクチャ、テクノロジアーキテクチャという四つの領域を区別します。
As-Isモデルで現状を、To-Beモデルで目標像を表し、その差を埋めるための施策や移行を考えます。個別システムだけの最適化ではなく、重複システムやデータ分断、標準不統一などを組織全体から見直すことがポイントです。
SOAは、業務機能を再利用可能なサービスとして組み合わせるアーキテクチャの考え方で、FEではアプリケーションアーキテクチャに関連する用語として扱われます。
| EAの領域 | 主に体系化するもの |
|---|---|
| ビジネスアーキテクチャ | 組織の目標・業務・業務プロセス |
| データアーキテクチャ | 業務に必要なデータとデータ間の関係 |
| アプリケーションアーキテクチャ | 業務とアプリケーションの関係 |
| テクノロジアーキテクチャ | ハードウェア・ソフトウェア・ネットワークなどの技術基盤 |
FE深掘り
8. FEでは投資計画・調達選定・調達リスクまで評価する
『提案が良さそう』ではなく、評価手順と根拠をそろえて選定します。
情報システム投資計画では、経営戦略との整合性を前提に、効果、影響、期間、実現可能性などから複数案を比較します。個別案件を中長期の情報システム化基本計画や優先順位と結び付けることが重要です。
FEの調達では、RFI、RFPに加えてRFQ(見積依頼書)も扱います。提案評価基準や要求事項への適合度に重みを付け、費用内訳、工程、納期、実現性、信頼性などを比較します。
調達には、法令遵守、契約、知的財産、供給者への依存、セキュリティなどのリスクもあります。選定時点だけでなく、契約条件や役割分担を明確にすることが重要です。
基本情報ではここまでつなげる
- 情報システム戦略の策定でAs-Is分析からTo-Be・投資対象選定へ進む流れを説明できる
- EAの四つのアーキテクチャを区別できる
- システム化構想・計画と要件定義の役割を区別できる
- RFI・RFP・RFQ・提案書・見積書の役割を区別できる
- 調達先を要求適合度・費用・納期・実現性・信頼性などから比較する理由を説明できる
- 情報システム投資を経営戦略と中長期計画へ結び付けて評価できる
最後に「なぜ→何を→どう調達するか」へ戻す
- 経営・事業目標を起点にする
- As-Isを調査し、課題を明らかにする
- To-Beと情報システム戦略を定める
- システム化構想・計画で対象と優先順位を具体化する
- 要件を分析し、利害関係者と合意する
- RFI/RFPなどを使って調達案を比較する
- 投資効果・実現性・リスクを評価し、導入後も見直す
この分野は文書名を暗記するより、『誰が、何のために、どの段階で使うか』を流れの中で整理すると、RFI/RFPや要件・計画の違いを判断しやすくなります。