体系学習
システム構成・性能・信頼性をまとめて理解する
集中・分散・並列処理、クライアントサーバ、仮想化、RAID、性能指標、MTBF/MTTR、稼働率、信頼性設計を一つの流れで整理する。
対象資格:ITパスポート / 基本情報技術者試験
目安時間:35分
このページで理解できること
- 集中処理・分散処理・並列処理の違いを説明できる
- デュアルシステムとデュプレックスシステムを区別できる
- ホスト型・ハイパーバイザー型・コンテナ型の仮想化を大まかに区別できる
- RAID0とRAID1の基本的な特徴を説明できる
- レスポンスタイムとスループットを区別できる
- MTBF・MTTRと稼働率の関係を説明できる
- FEでは直列・並列システムの稼働率、RAID5/6/10、RASIS、キャパシティプランニングまで判断できる
基本情報技術者試験:ITパスポート範囲に加え、2層/3層クライアントサーバ、RAID各方式、RASIS、キャパシティプランニング、直列・並列システムの稼働率計算、冗長構成を具体的に評価できる状態を目標にする。
システム構成は、機器を何台置くかだけの話ではありません。処理をどこで行うか、障害時にどう継続するか、性能を何で測るかをまとめて考える必要があります。このページでは、構成→性能→信頼性という順に整理し、最後に稼働率計算へつなげます。
まずは構成から評価までの流れ
構成を選び、その構成を性能と信頼性の指標で評価します。
処理形態を選ぶ
集中・分散・並列など、処理をどこでどのように実行するかを考えます。
冗長構成を考える
デュアル、デュプレックス、クラスタなどで障害時の継続性を高めます。
実行環境を分離する
VMやコンテナなどの仮想化によって資源を効率よく分離・共有します。
ストレージを構成する
RAIDなどで性能と冗長性のバランスを取ります。
性能を測る
レスポンスタイム、スループット、ベンチマークなどで性能を評価します。
信頼性を測り改善する
MTBF、MTTR、稼働率を確認し、信頼性設計や冗長化につなげます。
1. 集中・分散・並列は「処理をどこで行うか」が違う
名前が似ていても、処理配置の考え方は異なります。
集中処理は、主要な処理を中央のシステムへ集約する方式です。管理を集中しやすい一方、中央側の障害や負荷が全体へ影響しやすくなります。
分散処理は、複数のコンピュータや拠点へ処理・データを分けて実行する考え方です。クライアントサーバシステムは代表的な分散処理方式の一つです。
並列処理は、一つの処理を複数のプロセッサや計算資源で同時に進め、処理時間の短縮などを狙う考え方です。分散していることと、必ず並列に同じ処理を進めることは同義ではありません。
| 処理形態 | 中心となる考え方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 集中処理 | 処理を中央へ集約する | 中央側へ負荷・障害影響が集中しやすい |
| 分散処理 | 処理やデータを複数の場所へ分ける | 通信や整合性管理が必要になる |
| 並列処理 | 複数の計算資源で同時に処理する | 分割可能な処理かどうかが重要 |
2. デュアルとデュプレックスは冗長化の使い方が違う
二重化していても、両系を同時に使うか、待機系として使うかが異なります。
デュアルシステムでは、二つのシステムで同じ処理を行って結果を照合するなど、両系を使って高い信頼性を確保します。障害時にも正常側で処理を継続できますが、コストは高くなります。
デュプレックスシステムでは、通常処理を行う主系と、障害時に切り替える待機系を用意します。待機系を常時起動して切替えを速くするホットスタンバイや、通常は停止しておくコールドスタンバイなどがあります。
クラスタは複数のコンピュータを連携させ、一つのシステムのように利用する構成です。目的に応じて可用性向上や負荷分散へ利用されます。
| 構成 | 通常時 | 特徴 |
|---|---|---|
| デュアルシステム | 両系で処理し結果照合などを行う | 高い信頼性を狙うが資源コストが大きい |
| デュプレックスシステム | 主系が処理し従系が待機する | 障害時に待機系へ切り替える |
| クラスタ | 複数ノードを協調動作させる | 可用性向上や負荷分散に利用できる |
3. VMとコンテナは分離する層が違う
どちらも仮想化ですが、OSまで個別に持つかどうかで性質が変わります。
ホスト型仮想化では、既存のホストOS上で仮想化ソフトウェアを動かし、その上でVMを実行します。
ハイパーバイザー型では、ハードウェア上のハイパーバイザーが複数のVMを管理します。各VMは原則として独立したゲストOSを持ちます。
コンテナ型では、ホスト側のOSカーネルを共有しながら、アプリケーションの実行環境を分離します。一般にVMより起動や資源消費を軽くしやすい一方、OSカーネルを共有するという違いがあります。
仮想化はサーバ統合や環境分離、移行の柔軟性に役立ちますが、物理資源そのものが無限に増えるわけではありません。
| 方式 | OSの考え方 | 特徴 |
|---|---|---|
| ホスト型 | ホストOS上でVMを実行 | 導入しやすいがホストOSの層を経由する |
| ハイパーバイザー型 | ハイパーバイザー上で各VMがゲストOSを持つ | サーバ仮想化で広く利用される |
| コンテナ型 | ホストOSカーネルを共有 | 軽量な環境分離に向く |
4. RAIDは「高速化」と「冗長化」を方式ごとに見分ける
RAIDというだけで必ず耐障害性が高いとは限りません。
RAIDは複数の記憶装置をまとめて扱い、方式に応じて性能や信頼性を高める技術です。
RAID0はデータを複数ドライブへ分散して読み書きするストライピングです。性能向上を狙えますが冗長情報を持たないため、一台の故障でもデータを失う可能性があります。
RAID1は同じデータを複数ドライブへ保存するミラーリングです。容量効率は下がりますが、複製によって冗長性を持たせます。
RAIDはバックアップそのものではありません。誤削除、ランサムウェア、災害などに備えるには、RAIDとは別に適切なバックアップが必要です。
| 方式 | 基本原理 | 冗長性 |
|---|---|---|
| RAID0 | ストライピング | なし |
| RAID1 | ミラーリング | あり |
5. 性能指標は「1件の速さ」と「単位時間当たりの量」を分ける
レスポンスタイムとスループットは同じ性能指標ではありません。
レスポンスタイムは、要求を出してから応答が返り始める・返るまでの時間として、対話型システムの体感性能を考えるときに重要です。
FEでは、処理を依頼してから処理全体が完了するまでのターンアラウンドタイムや、単位時間当たりに処理できる仕事量を表すスループットも区別します。
ベンチマークは、定められた処理を実行してシステム性能を比較・評価する方法です。異なる条件の測定値を単純比較しないことが重要です。
6. 稼働率はMTBFとMTTRの両方で決まる
故障しにくくするだけでなく、早く復旧することでも可用性は上がります。
MTBF(平均故障間動作時間)は、修理して再び使うシステムについて、故障から次の故障まで正常に動作している平均時間を表す代表的な信頼性指標です。
MTTR(平均修復時間)は、故障してから修復し再び利用可能になるまでの平均時間を表します。
単純な修理可能システムを定常的に繰り返すモデルでは、稼働率は MTBF ÷ (MTBF + MTTR) で求められます。MTBFが長いほど、またMTTRが短いほど稼働率は高くなります。
実際の可用性設計では、計画停止の扱いや冗長構成、共通原因故障なども考慮します。試験の計算問題では、問題文の前提を確認して式を選びます。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| MTBF | 900時間 |
| MTTR | 100時間 |
| 稼働率 | 900 ÷ (900 + 100) = 0.9 = 90% |
7. フェールセーフ・フォールトトレラント・フールプルーフを区別する
事故を安全側へ倒すのか、故障しても継続するのか、誤操作を防ぐのかで分けます。
フェールセーフは、故障や異常が起きたときに危険な状態へ進まず、安全側へ移行するよう設計する考え方です。
フォールトトレラントは、一部が故障しても冗長化などによってシステム全体の機能をできるだけ継続できるようにする考え方です。
フールプルーフは、人が誤った操作をしようとしても事故や故障につながりにくいようにする設計です。
FEでは、障害時に機能を縮小してサービスを継続するフェールソフトなども関連付けて整理します。
| 設計思想 | 中心となる目的 | 例の考え方 |
|---|---|---|
| フェールセーフ | 故障時に安全側へ移す | 異常時に危険な動作を停止する |
| フォールトトレラント | 故障しても機能を継続する | 冗長系へ切り替える |
| フールプルーフ | 人の誤操作を起きにくくする | 危険な操作を物理・論理的に受け付けない |
FE深掘り
8. FEではRAID方式とキャパシティプランニングまで広げる
冗長化方式だけでなく、性能需要に合わせた資源計画も扱います。
RAID5は分散パリティを用い、一般に一台のドライブ故障に耐えられる構成です。RAID6は二重のパリティを用い、一般に二台のドライブ故障に耐えられます。RAID10はミラーリングした組をストライピングする構成で、性能と冗長性を組み合わせます。
パリティを使う方式では、書込み時にパリティ計算や更新が必要です。方式ごとに性能、容量効率、耐障害性が異なるため、目的に合わせて選択します。
キャパシティプランニングでは、現在・将来の処理量や応答時間などの要求から、サーバ、ストレージ、ネットワークなどの必要性能を見積もります。
スケールアップは一台のサーバのCPUやメモリなどを強化する考え方、スケールアウトはサーバ台数を増やして処理能力を拡張する考え方です。
FE深掘り
9. FEでは直列・並列システムの稼働率を計算する
どの装置が動けばシステム全体が稼働するかを先に確認します。
各装置の故障が独立していると仮定し、すべての装置が必要な直列システムでは、全体の稼働率は各装置の稼働率の積で求めます。
複数装置のうち少なくとも一台が動けばよい単純な並列システムでは、『全部が停止する確率』を1から引きます。二台なら 1 - (1-A1)(1-A2) です。
並列化すれば常に現実の可用性が式どおり上がるとは限りません。共通電源や共有ストレージなど、一つの障害で両系が止まる共通原因がある場合は、独立故障の単純式だけでは評価できません。
FEではRASISとして、Reliability、Availability、Serviceability、Integrity、Securityという評価観点も整理します。
| 構成 | 計算 | 全体稼働率 |
|---|---|---|
| 直列 | 0.9 × 0.9 | 0.81 |
| 並列(少なくとも1台稼働) | 1 - (1-0.9)² | 0.99 |
基本情報ではここまでつなげる
- 2層・3層クライアントサーバの基本構成を説明できる
- RAID0/1/5/6/10の代表的な違いを説明できる
- レスポンスタイム・ターンアラウンドタイム・スループットを区別できる
- MTBF・MTTRから単純な稼働率を計算できる
- 直列・並列システムの稼働率を構成条件から計算できる
- RASISの五つの観点を説明できる
- キャパシティプランニング、スケールアップ、スケールアウトを区別できる
最後に「構成→性能→信頼性」で整理する
- 処理をどこで行うかで集中・分散・並列を区別する
- 障害時の継続方法でデュアル・デュプレックス・クラスタを整理する
- VMとコンテナはOSを共有する層が異なる
- RAIDは方式によって性能・容量効率・耐障害性が異なる
- 性能は時間と処理量の両面で評価する
- MTBFを長く、MTTRを短くすることで稼働率を改善できる
- 冗長構成の稼働率計算では、直列か並列かと独立故障の前提を確認する
構成名だけで覚えるのではなく、『通常時にどちらが処理するか』『故障時にどう継続するか』『何を改善したい構成か』まで結び付けると判断しやすくなります。